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インドからシンガポールへ赴任!新たにインパクト投融資へチャレンジ

私たちは、グローバルビジネスを通じて「今よりもっと便利で豊かな持続可能な社会」の創出に取り組んでいます。

私たちの取り組むインベストメント事業は、財務的なリターンだけでなく、環境・社会的にポジティブかつ測定可能なインパクトを創出することの両立を意図した投資活動である「インパクト投融資」を行っています。

今回は、2019年よりインドへ赴任、今年の4月からシンガポールの Saison International Pte. Ltd. (以下:Saison International)へ異動し、インパクト投融資事業推進チームにて新たなチャレンジをしている水野さんにお話を聞きました。

※この記事の内容は、取材当時のものです。

水野 理恵(みずの りえ)
Saison International Pte. Ltd.



インパクト投融資への挑戦、ポジティブ・インパクトを起こしていきたい


ー水野さんは4月からSaison Internationalのインパクト投融資事業推進チーム(以下:インパクトチーム)に異動されたと聞きました。
現在どのような業務を担当していますか?

私が異動したインパクトチームは、一言でいうと「マルチナショナル」で多国籍なメンバーで構成されています。

フランス人の上司はフランスから全世界各国を、インド人の同僚はインド国内を、インドネシア人の同僚はインドネシア国内を、そして私がシンガポールからアジア地域全体を担当しています。

チーム全体のミッションは、ESGやインパクトの考え方(以下:ESG・インパクトレンズ)を海外のグループ会社全体の事業や投融資活動にあてはめ、充分な金融サービスを受けられていない個人や企業に資金を提供している企業かつ、私たちが目指すインパクトゴール(※1)に合致する企業に投融資を実行できるようにサポートすることです。

※1 私たちが目指す2 つのインパクトゴール

インパクトゴール 1 :MSMEs(中小零細企業)の潜在的な成長力と経済機会の引き出し
インパクトゴール 2:充分なサービスを受けていない個人や世帯の生活向上

その中で私は、シンガポールでオフショアにてインパクト投融資を行うSaison Investment Management Pte. Ltd.(以下:SIMPL)の検討案件が、ESG・インパクトレンズを通しても問題ないか机上の確認と合わせて、現地でのデューデリジェンス(※2)に同行しています。

並行して、本社(クレディセゾン)のサステナビリティ推進委員会(※3)のワーキンググループメンバーとして、グローバルでの活動内容や進捗状況について、本社の経営陣含む委員会のメンバーへの共有も行っています。

※2 デューデリジェンス:企業の経営状況や財務状況を調査することで、投資やM&Aなどの取引における価値やリスクを分析・評価すること
 
※3 サステナビリティ推進委員会:サステナビリティ戦略に関する活動の方向性を議論し代表取締役に答申する機関


Saison Internationalのインパクトチームメンバー


また、アジアと日本でのインパクト投融資市場におけるSaison Internationalのマーケットポジショニングの確立も重要な役割の一つです。

日本語を話せるメンバーが他にはいないので、日本語で本社メンバーとしっかりコミュニケーションをするという重要な役割もあります。

チームに加わる前は、“インパクト”に対して日本では情報が少なく、漠然としたイメージしか持ち合わせていませんでしたが、日本でも近年関心が高まりつつあるインパクト投融資は、欧米では広く認知され、取り組まれている分野です。

実際にクアラルンプールやコペンハーゲンで開催された世界規模のフォーラムに参加すると、いかに世界中の投融資家が関心を寄せ、長く取り組んできているか、そして試行錯誤しながらもポジティブ・インパクトに貢献しているかを身をもって知ることができました。

インパクト評価の理論や手法は日本では十分に理解されておらず、実践が追いついていないといわれていますが、私たちの持つ海外リソースを活かして、より多くのポジティブ・インパクトを起こせるよう努めていきたいと考えています。



デューデリジェンスを通じて学ぶこと

ーインパクト投融資における、デューデリジェンスではどのようなことをしますか?
また、今回現地を訪問した企業のデューデリジェンスの意図や目的を教えてください。

インパクト投融資のデューデリジェンスは、「企業の財務状況、法令遵守、営業状況、IT環境等様々な角度から調査・評価を行ってリスクを把握する」という一般的な項目に加え、ESG(環境・社会・ガバナンス)とインパクトに関する特有の指標を追加しています。

例えばESGの確認ポイントとしては、以下が挙げられます。

・取締役会はきちんと機能しているか
・貸付を行わない業種を定めたリストがあるか
・ESG関連のポリシーの準備があり、そのトレーニングが従業員に対し行われているか
・顧客保護の対策はきちんと取られているか
・過剰な貸付が発生しないようきちんと審査が行われているか

またインパクトに関しては、インパクトフロンティアの5次元(「What」、「Who」、「How much」、「Risk」、「Contribution」)(※4)という枠組みに基づく独自のツールを作成し、すべての企業をその5つの次元に対して評価し、採点しています。

また、GIINのIRIS+(※5)などのセクタースタンダードもツールに組み込み、以下のような項目を確認しています。

・女性社員が占める割合はどの程度か、社員の雇用契約はきちんとされているか
・給与は業界水準か
・どのSDGsに貢献しているのか
・女性や郊外に住む方、そして初めて金融商品にアクセスしている人の割合はどの程度か
・顧客保護をきちんとしていると第三者から認められているか

※4 インパクトフロンティア5 :dimensions of Impact
https://impactfrontiers.org/norms/five-dimensions-of-impact/

※5 GIIN’s IRIS+:https://iris.thegiin.org/metrics/


4月にチームに加わってから、既にベトナム・インドネシア・カンボジアにそれぞれ複数回デューデリジェンスに訪れ、朝から晩まで数日をかけて各社の対応をしました。

確認事項が多いため頭はパンパンになりますが、SIMPLの投融資チームだけでなく、インパクトの視点から私たちインパクトチームのメンバーも入り、複数名で確認を行うことはより多くの気づきを得ることができるため重要です。

時には意見がぶつかることもありますが、最終日にSIMPLの投融資チームのメンバーとその土地ならではのごはんを食べる時間を楽しみに都度乗り越えています!

既にたくさんの出張を共にした投融資チームメンバーとは、濃い時間を共に過ごすので良い関係が築けていると感じます!


SIMPLの投融資チームのメンバーが開いてくれた歓迎会、家族ぐるみで親交があります。


コミュニケーションを大切に、責任を持って関わっていくこと

ーデューデリジェンスの業務を通して訪問先の企業の様子やそこで働く人たちの様子はどうでしたか?印象に残ったエピソードはありましたか?

投融資チームとインパクトチーム合同で主要経営陣一人ひとりと面談をし、当該企業に融資を実行しても問題ないか判断するための材料を可能な限り集めます。
いかに関係を構築して本音を引き出せるかが重要です。

そしてその企業の持続可能な成長のための改善ポイントを伝えたり、場合によっては契約条件や更新条件に盛り込むなど、投融資の判断をサポートしています。

これら私たちのアドバイスはESAP(環境・社会アクションプラン)と呼ばれ、アセスメントの結果と現場でのデューデリジェンス結果に基づき、レッドフラッグ(危険信号)に対する対応策や緩和措置の実施などを投融資候補先に指導することも私たちの役割の一つです。

またデューデリジェンスにとどまらず、インパクト投融資のはじめから最後までしっかりと関わることが重要となります。

融資のライフサイクルを通じてインパクトを追跡するためには、継続的なモニタリングが重要です。
そして、慎重に精査する一方で、先方が求めているスピード感に対応できず他社がその間に融資を行ってしまえば、これまでの過程で両者が費やしてきた時間が無駄になってしまうため、スピード感も非常に重要です。

印象に残っている出来事としては、先方より「いただいた質問に答えている中で、当社に欠けているものや改善すべき点に気づけたり、また現在取り組んでいる内容が世界基準に近しいものであると知れて自信につながったりました。非常に感謝しています」とのコメントをいただいたことです。

Saison Internationalが投融資家として参加することで、その融資先企業にポジティブ・インパクトを与えていることを実感できて嬉しくなりました。


投融資先へモニタリング訪問した時の様子


嬉しかった出来事、今後のモチベーションに


ー訪問先の企業から融資を受けた最終顧客へのインタビュー(現地取材)の機会はありましたか?

融資先のデューデリジェンスに加えて、実際に営業を行っている支店と最終顧客の訪問も数件実施します。
投融資先本社の経営陣の声だけでなく、支店の営業担当者や最終顧客の話を聞くことに重きを置き、訪問の時間もしっかり作り現場の声を聴くことを大事にしています。

これまで実際に契約書にサインをする場面、現金を受け取る場面、返済をする場面等多くの場に同席しました。

最終顧客がなぜこの会社からローンを借りたのか、ローン契約時にはきちんと条件の説明があったか、営業担当者や困ったときの対応に満足しているのか等、顧客保護の観点で確認を行うことや、工場等の場合は働く環境がふさわしいものかを確認したりもします。

事業をされている方と話すと、融資元と良い関係を築けていることを垣間見れたり、実際のオペレーションが本社で説明を受けたものと相違がないかも確認できます。

お話を伺う中で、事業を拡大して雇用を増やすことができていたり、ローンを借りて事業を拡大できたことでお子さんの教育に資金を出せるようになったご家庭では、インタビュー中に学校からお子さんが帰ってくる光景を目の当たりにし、ポジティブ・インパクトに貢献できていることを実感できました。

また、インドネシアでの最終顧客へのインタビュー時に、融資先の企業の方から「シンガポールから来てきてくれているSaison Internationalの皆さんです。彼らがサポートしてくれていることで、私たちが皆さんにのローンを貸すことができています」と紹介してくださり、最終顧客の皆さんがローカル言語で「ありがとう」と伝えてくださったことも非常に印象的でした!


SIMPLの投融資チームメンバーも全員国籍が異なるので、各国の行事をお祝いすることが楽しいです。この日はインドのディワリ(インドのお祭り)をお祝いしました。


一方、ESGの観点から懸念点を見つけることもあります。
工場で安全装備を身に着けていない社員を見かけたり、強いゴム臭がするのにマスクをしていなかったり、児童労働かもしれない事象を発見したり、働く方の半分以上が雇用契約を締結していない疑いがあることが発覚したり…。

確認した事象は投融資候補先にも伝え、改善すべき点をまとめてアクションプランを作成し共有します。改善が望める点に関しては一緒に解決し、当社からの投融資をきっかけにより持続可能な経営を続けていけるようサポートすることも私たちの役割の一つです。


一人前の「インパクトパーソン」を目指したい


ー水野さんの現在のお仕事への向き合い方、ご自身の今後の目標など教えてください。

正解がない世界で、日々判断に迷いながらも、上司や投融資チームメンバーと連携しながら最善な判断ができるよう努めています。とくにインパクトウォッシュ(※6)といわれるようなことがないよう、常に気を付けています。

※6 インパクトウォッシュ:実態を伴わないのに社会的インパクトがあるように見せかけること。社会的インパクトを偽ったり、誇張したりすること。
 
 
資金が必要なポジティブ・インパクトを追求している企業、そこにぜひ融資をしたいSIMPLの投融資チーム、でも“Do no harm”(害を成さない =ESGの考え方)と“Do Good”(善を成す =インパクトの考え方)をきちんと確認することが私たちの努めです。

日本語で入手できる情報には限りがあるため、常にアンテナを張りながら情報収集に努めています。

またチームのみんながワークライフバランスを非常に大事にしています。
家族の誕生日だからこの日は残業できない、子どものお迎えがあるからこの時間は連絡しないで、気分転換に旅行に出るからしばらく休むなど、家族や心の健康を重要視している考え方も素敵です。


カンボジアの投融資先の最終顧客が運営する菜園で投融資チームのメンバーと


マルチナショナルな環境は、信頼関係の構築、伝え方などインドにいた時とはまた異なるコミュニケーションの工夫が必要だと感じています。
それぞれの文化や習慣を理解することも重要だと改めて気づかされました。

英語が第二言語のメンバー同士、伝え方がわからない時や単語が出てこない時にサポートしたり、気持ちを分かりあえることなどもマルチナショナルだからこそできることです。

そして日常的に、特にデューデリジェンスの期間は体調を崩さないように日ごろから体調管理にも気をつかっています。
出張も多く、限られた時間(通常1~3日)で必要な情報を伺い、その企業に融資するかを判断するので集中力と体力はとても重要です!

コロナウィルスのパンデミックを挟みながら約4年半を過ごしたインドからシンガポールに異動して7カ月になりますが、インドで学んだヨガを定期的に続けながら、心と体の健康第一に日々楽しく働きつつ、早く一人前の「インパクトパーソン」になれるよう、日々努力を続けていきます!


オフィスにてシンガポール建国記念日に集合写真を撮影、国旗の赤か白がドレスコードでした。


ー水野さん、ありがとうございました!


・Saison Internationalのインパクトレポート(英語)

・クレディセゾンのグローバル事業について