お月玉 〜内製開発の挑戦と学び〜
2019年に内製開発チームを立ち上げ、最初に取り組んだのがスマートフォンアプリを活用した「セゾンのお月玉」施策でした。
この施策では、セゾンカードのご利用金額500円ごとにデジタル抽選券がもらえ、月に一度デジタルガチャを回して当たりが出ると現金1万円がもらえるというものでした。(なお、本キャンペーンはすでに終了しています。 )
X(旧Twitter)でも高い効果を発揮し、フォロワー数が半年で12,000人から20万人に増加。また、アプリ会員のショッピング取扱高や新規アプリダウンロード数も大幅に増加し、内製開発の基盤を築くことができました。
当時の様子を藤野さんに振り返ってもらいました。
内製開発の方向性を決定づけたプロダクト
内製開発の部署であるテクノロジーセンターが立ち上がり最初に手掛けたプロダクト「お月玉」。
現在は役割を終えクローズされましたが、このプロジェクトは内製開発の方向性を決定づけたと言えるでしょう。
開発は我々テクノロジーセンターが担いましたが、この施策は企画担当者、お問い合わせ対応者、現金送付担当者、封筒のデザイン担当者など、さまざまな役割の人たちと一体になって取り組みました。
これは事業会社内に開発メンバーがいるからこそ、スピード感を持ってやりたいことを実現できたのだと思います。
演出動画がリリース1週間前なのにできていなかった
デジタル抽選券をためてデジタルガチャを回すと、演出で「当たり!」や「残念!」などが表示されます。しかし、抽選の仕組みは完成していたものの、演出動画が完成しておらず、動画制作部門から上がってきたのはリリースの1週間前でした。エンジニアとしては「どないなってん!」と思いましたが、動画にこだわり抜いた結果、ギリギリのタイミング(予定はとうにオーバーしていましたが)で完成しました。
普段はダイナミックなコンテンツを作るエンジニアとそうでないエンジニアが混ざっていましたが、みんなで手分けしてスクリプト書け!などとやっていました。
そんな中で、動画の演出タイミングの調整もあり、リリース3日前にあるメンバーが「API(※1)を変える!」と言い出しました。しかし、アプリはもう変更できないため反対し、ケンカになりました。それを仲裁したメンバーがなぜかAPI担当者とさらにケンカになり、最終的には「後で変えよう」という結論に至りました。
※1API(アプリケーションプログラミングインターフェース):ソフトウェアの機能の一部を別のソフトウェアやプログラム上で稼働できるように繋ぐ仕組み
振り返ると、あの時の出来事は何だったのかと思うこともありますが、良い思い出でもあります。進め方に良し悪しはありましたが、お客様により良いものを提供するために、エンジニアだけでなく周囲の人々も真剣に取り組んだからこそ、ギリギリまで追求できたのです。アジリティが高いからこそ(高いと信頼してもらっているからこそ)起こった出来事だと感じています。
試行錯誤をエンジニアも一緒にやる
「クリスマスだから封筒のデザインを変えてみてはどうか?」「正月もあるし、正月らしいデザインは?」「でも抽選日って15日だからお年玉感がないんじゃない?」といった意見交換がエンジニア、企画部門、デザイン部門で取り交わされ、さまざまな改善が施されてきました。
当初は深夜0時に抽選結果の公開を行っていましたが、「深夜監視つれえ・・・」「お昼に当選がわかった方がTwitter(現X)に書いてくれるんじゃないか」「昼間だと集計が間に合うかどうか・・・」などさまざまな意見があり、最終的にお昼に変更されました。また、抽選から1万円の発送までの時間を短縮するなど、改善を続けました。
「こうしたいがシステム的にどうなの?」「現金発送の準備は早くできないのか?」といったお互いの知らないことを同じ会社の人間として意見交換できたからこそ、実現できた改善も多くありました。こうしたスタンスが、現在の内製開発で掲げられている事業部門との「伴走型内製開発」にもつながっていると思います。
また、システム的な可否(機能が実現できるかどうか)がすぐにわかる環境は大きなアドバンテージであると改めて実感しました。
お月玉その後
好評のうちに役割を終えクローズされましたが、さまざまな学びがありました。
アクセスが過多になってバックエンドがちょいちょい悲鳴を上げる場面がありました。
これが後に基幹システムに近いバックエンドのシステムも内製化していこうという決断につながりました。また、モバイルアプリは自分たちで作りたいという思いも強まりました。
さらに、後にリリースされるSAISON GOLD Premiumカード(※2)の開発においても、「お月玉」での学びが思想や仕組みに取り入れられました。
※2SAISON GOLD Premium:カード券面にはクレジットカードで日本初となる「METAL SURFACE CARD™(メタルサーフェスカード)」を採用。非接触決済にも対応。
これらの学びは、実際にやってみて初めてわかったことですが、「やってみた」ことで課題が見え、その課題に取り組むことで、自分たちの進むべき道が決定され、ここまで進んできたのだと改めて実感します。
テクノロジーセンター 福島 彩香