「百聞は一見に如かず」インド出張を通じた学び
クレディセゾンは、グローバル事業の拡大に伴い、国内-海外、本社-子会社といったあらゆるボーダーを取り払い、グループ一体となってグローバル企業への転換を図っています。
その取り組みの一つとして、今年より本社メンバーによるグローバル拠点出張プロジェクトを始動、その第一弾として今年3月に取締役をはじめさまざまな部門の経営・マネージャー陣がインドにある当社子会社のKisetsu Saison Finance (India) Pvt. Ltd.(以下:Credit Saison India)を訪問しました。現地では市場視察をはじめ、同社経営陣とのセッション、交流を行い、事業への理解深化を図りました。
今回の出張を通じて見えてきた当社インド事業のポテンシャル、そして今後のクレディセゾンに求められるグローバル化について、出張に参加された執行役員の川原さんにお話を伺いました。
※この記事の内容は、取材当時のものです。
インドでの事業の成長と出張の背景
ーはじめに、これまでのグローバル事業と川原さんとの関わりについて教えてください。
直接的な関わりとしては、海外を対象としたCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)であるSaison Capital Pte. Ltd.に設置している投資委員会のメンバーとして、インドを含むアジアなどのベンチャー企業に対する出資検討に参加していました。
全社的な目線では、経営戦略上重要なグローバル事業の中でも、特に成長著しいインド事業については日々の会議体でもよく話題になるため強い関心を持って聞いていました。
今回のインド出張あたっては、以前役員合宿(研修)に参加している時に「当社全体がグローバル化を目指していく中で、率先垂範すべきリーダー層の役員部長クラスが具体性を持ってグローバル事業の現状や将来性を語ることができるようになろう」となり、あらゆるマネジメント層が海外拠点に行くことが決まりました。
私自身、2018年に当時QRコード(※)決済が急速に普及していた中国(上海・深圳)を視察したことがあり、その際に現地の様子や人々の行動、小売店の状況などを直接自分の目で見ることの大切さを感じていたので今回のインド出張もとても楽しみにしていました。
インドは世界一の人口で、数年以内に日本のGDP(国内総生産)を抜くだろうとも言われているので、どのような国なのか自分なりに理解したかったのです。一方で「おなかを壊す」という話もよく聞いていたので、一抹の不安は感じていましたが(笑)
(※)QRコードは株式会社デンソーウェーブの登録商標です。
「日本では考えられない光景」インド初訪問の感想
ー実際に初めてインドのベンガルールを訪れた感想はいかがでしたか?
空港に到着したのが現地時間の深夜だったのですが、その時間にも関わらず空港周辺でも、ホテルへの道中でも、多くの若者が出歩いているのを見て非常にエネルギッシュな印象を受けました。
道路では、車、バイク、オートリキシャ(3輪バイク)が車線もおかまいなしに、絶え間なくクラクションを鳴らしながら密集して走っていました。また、たまに車道のど真ん中を牛が優雅に歩いていたり(インドでは神聖な動物であるため、車が牛を避けて走っていましたが)と、これは日本では考えられない光景でした。
市内には日本のような大きなショッピングセンターもありましたが、消費の主役は小規模な小売店や飲食店で、さながらアメ横商店街のような雰囲気でした。露店を囲んで立ったまま食事をする人が多かったのも印象的でした。
初日には、DSA(Direct Selling Agent)と呼ばれるローン販売代行業者のオフィスを訪問しました。Credit Saison Indiaは現在、インド全土で中小零細企業(MSME)向けローンを提供していますが、顧客獲得にあたっては、このDSAの販売網を活用し、多くの顧客にリーチしています。
これまで日本での会議や来日した同社経営陣から聞いていたCredit Saison Indiaに関する話では、データ分析とデジタルをフル活用したロジカルな経営戦略や事業運営の印象が強かったのですが、DSAオフィスでのヒアリングや実際のローン申込書類の束を見ると、実際はローンレンダーとして選ばれるための販売代理店の方とのつながりが重要であること、そしてデジタルで処理する前には膨大な紙が必要であるなどアナログな部分もあって、日本の営業手法と共通する部分、デジタル化されていない側面もあるのだなと再認識しました。
各国の背景を学び尊重することの大切さ
ーCredit Saison Indiaの視察で特に印象に残ったことについて教えてください。
Credit Saison IndiaでのMSME向けローン与信のセッションでは、与信上必要な「法人ID、納税証明、銀行の入出金データ、外部信用機関によるスコアリング」などを法人先から徴求せずとも取得可能なデータインフラが整備されており、日本以上に国策としてのデジタル化が進んでいると感じました。
またCredit Saison Indiaではこれらのデジタルで入手可能な情報だけでなく、現地MSMEへの訪問や経営者インタビューなどリアルでの入念な確認を組み合わせて与信判断しているところも秀逸でした。
法人審査への銀行明細データ活用や企業調査機関とのデータ連携は、日本側でも検討していたところだったので、大変参考になりました。
ちなみにCredit Saison Indiaが入居しているビルは、前日に見たDSAや現地小売店の雰囲気とは一変して、非常に近代的なオフィスビルで、内部にもカフェラウンジがあったりとまるで日本のベンチャー企業が集まるシェアオフィスのようなオシャレな雰囲気でした。企業規模の拡大に伴い社員数も増えているせいか比較的密集して座っていましたが、社内の皆さんは笑顔も多く熱気に溢れていて、Credit Saison Indiaのロゴ入りバッグやカップを使用するなど帰属意識の高さが感じられました。
会議室の名前が「日本の地名」(「Sendai」「Nagoya」など)になっている点は、本社が日本の会社らしくユニークなポイントで、本社とのつながりを感じてうれしい気持ちになりました。
Credit Saison Indiaではエンベデッド(組込型)ファイナンスという携帯キャリアやプラットフォーマーなど個人の顧客基盤を抱える事業者と提携して資付を提供するサービスを展開しているのですが、今回、実際に携帯キャリアと連携した個人向けローンの画面遷移を見せてもらいながらレクチャーを受けました。Credit Saison Indiaの提供するユーザーインターフェース(UI)は、非常に洗練されており、帰国後に日本側で申込手続きのオンライン化を検討しているチームと一緒に参考にするなど、国は異なりますが、ビジネス上の共通課題と学びが多くありました。
また経営上重要なインド事業に対する共通認識が図れたことに加え、今回私以外の出張メンバーはファイナンス、人事、信用企画、グループ戦略など多様な部門から集められたこともあって、同じ場面でも各メンバーによって感じ方や受け止め方が異なることで、自分一人では見えなかったであろうさまざまな角度からの気づきに溢れた時間になりました。
他方で、インドでは日本とは異なり、貧富の差や文化的・宗教的背景による階層を垣間見ることもありました。日本での常識や慣習は、必ずしもグローバルスタンダードではありません。
私たちがグローバル企業として躍進していくためには、多様な価値観への対応だけでなく、各国の歴史的・宗教的・文化的・地政学的な背景を正しく学び、理解し、尊重したうえで誠実に向き合う必要があると強く感じました。
具体的な体験は物事の理解を深めてくれます。まさに「百聞は一見に如かず」です。
今後も多くの社員が同様の経験をすることでグローバルにおける日本との違いと共通点を知り、個々人が興味の幅を広げてより高い視座で世界と向き合うことによって、当社のグローバル化を加速していけると確信したインド出張でした。
-川原さん、ありがとうございました!