スタートアップカンファレンスIVS2024 KYOTO体験レポート
こんにちは、クレディセゾンの菅野です。
皆さんは“CVC“という言葉をご存知でしょうか。聞いたことはあるけれど、日々どんな業務を行っているのかは知らない、と言う方が多いのではと思います。かく言う私もその一人でした。
CVCとは、Corporate Venture Capital(コーポレートベンチャーキャピタル)の頭文字を取った言葉であり、事業会社が社外のベンチャー企業に対して行う投資活動のことです。
クレディセゾングループでもCVC事業を行っており、国内・海外それぞれで法人を設立しています。日本では2015年に日本のスタートアップ企業の発掘及び投資を目的として「セゾン・ベンチャーズ」を設立、海外では2019年に東南アジア・インドを中心とした海外のFintechに関連するスタートアップへの投資を目的としてシンガポールに「Saison Capital」を設立しました。また2022年にはWeb3関連のスタートアップへの投資に特化した「Saison Crypto」を設立、現在海外2社の投資先は100社程度にまで成長しています。
私は現在、海外CVC2社を含め海外子会社の管理業務を担当しています。彼らの事業や投資領域に関する知識を深めるべく、今年7月に京都で開催されたスタートアップカンファレンス「IVS KYOTO」、そして期間中Saison Capitalが開催したイベントに参加してきました。
今回は知られざるCVC業界のとある一日の業務を皆さんにご紹介します!
※この記事の内容は取材当時のものです。
スタートアップカンファレンス:IVS KYOTOに参加
"Cross the Boundaries"(境界線を越える)をテーマに、スタートアップ関連人口のさらなる拡大と人材流動性を高めることを目標とした日本最大級のスタートアップカンファレンスです。昨年は1万人を超える投資家、150社以上のベンチャーキャピタル(VC)が参加、参加者の内外国人が占める割合も20%以上と国内外問わず多様な人々が参加する、スタートアップ業界の一大イベントです。
受付を済ませ会場に入ると、中は大音量で音楽が流れており“THEスタートアップ“と言う感じでイケイケな雰囲気でした。
名刺を貼付したストラップをかけて会場を歩いていると、早速さまざまな企業の方々から声をかけていただきました。以前Saison Capitalのメンバーが「スタートアップにとって一定規模の上場企業から投資を受けるということは、単なる資金の調達というだけでなく彼らの会社、事業に対する信用力となり、事業を拡大させるには不可欠な要素なんだ」 と言っていたことを思い出し、今回実際たくさんの方に声を掛けられたことで、その言葉を身をもって実感しました。
会場では来年の大阪万博における日本のWeb3とFintechの変化に関するトークイベントが開催されており、当社の事業にも関連が深そうだったので参加しました。
万博のテーマである「デジタル」、「未来への行動」を個人が直接感じ、理解し、参加することを促すため、大阪万博では会場内決済は“現金不可、すべてキャッシュレス”で行うことに加え、三井住友フィナンシャルグループと協働し開発した“ミャクぺ”と言うプリペイド式デジタルウォレットを活用するという思い切った戦略にとても驚きました。
ちなみに「ミャクぺ」とはスマートフォンアプリを活用したWeb2、Web3領域を1つのアプリで提供するデジタルウォレットで、万博内で来場者が「ミャクぺ」を使用することでWeb3を身近に感じてもらい、理解を促進することで日本のデジタル化への後押しを目的に開発されたそうです。官と一体となりデジタル化を推進している他社の取り組みにも感心しました。
CVCの役割:投資先企業の資金調達をサポート
また今回の出張では、イベントに合わせて来日したSaison Capitalの投資先である「BroilerX」と日本国内のCVC、VCとの面談に参加しました。
BroilerXはインドネシアの養鶏農家に対し資金、IoTツール、肥料等、養鶏に必要な一連の物資を提供するアグリテック(※1)企業です。
※1アグリテック:アグリカルチャー(農業)とテクノロジー(技術)をかけ合わせた造語で、ICTやロボット技術を用いて農作物を生産する農業のあり方を指す
CVC業界では投資先企業が順調に成長できるよう、事業計画や採用活動、資金調達などあらゆる面で投資家がハンズオンでサポートすることがよくあります 。
各地から投資家が集まるこの機会に、Saison CapitalはBroilerXのリード投資家として資金調達の可能性を模索すべく10社以上のVC、CVCと面談を実施しました。
面談で感じたのは、VCとCVCでは如実に投資候補先を見る視点が異なっている点です。VCはマーケット規模、会社の収益性、キャッシュフローなど会社の成長性を中心に質問していたのに対し、CVCは自社との親和性やシナジーに関心を持っているようでした。これまでVC・CVCは投資会社として一括りで捉えていましたが、面談を通じてスタンスの違いに気づくことができました。
Saison Capital×三菱UFJイノベーション・パートナーズ(MUIP)でイベントを開催
今回の目玉は、Saison CapitalとMUIPが共同開催する投資家・スタートアップ間のフランクなネットワーキングを目的としたIVSのサイドイベントです。CVC業界ではより闊達なネットワーキングを目的として、カンファレンスの前後で様々な企業がサイドイベントを企画しています。
パネルディスカッションでは、セゾン・ベンチャーズから浦田取締役も参加し、「どのような企業にCVCは投資したいと思うか」「CVCと組むメリットは?」などのテーマに対し、実体験をもとに日本市場、日本企業としての知見を語りました。
国籍年齢問わず100名近くの多種多様な投資家・スタートアップに参加いただき、イベントは大盛況のうちに幕を閉じました。
京都出張を通じて…
これまで“CVC”と聞くと、出資前の企業調査や収益シミュレーションの算出などのデスクワークが中心というイメージが勝手ながらありましたが、実際には出資後に出資先の事業拡大や企業価値を上げるため 他投資家の紹介など地道にサポートしていることを体験し、一歩一歩の取り組みが大事だと学びました。
また私は新卒で入社して以来、海外子会社の管理、いわゆるバックオフィス業務を行っているため、これまでフロントに立って営業・商談、商品紹介をしたことがありません。子会社の状況を関連部門に報告することも多いのですが、自身が働いたことのない会社や事業にどうしても実感がなく、伝書鳩のような説明になってしまうことにもどかしさを感じていました。
今回、Saison CapitalメンバーをはじめIVSイベントで出会ったスタートアップやBroilerXの方々が自社の事業について自信をもって説明している様子を目の当たりにして、私もより現場の近くで働くことで、自信を持って事業や商品、サービスについて説明し、共感してもらい、人々を惹きつける仕事をしたいと強く思うようになりました。
今後も海外子会社の事業・イベントなど“現場”への参加を通じて事業を体験・実感したり、社外の方との交流イベントに積極的に参加することで、自身の視野を広げていきたいと思います!