ブラジルってどんな国?~駐在員の奮闘記録~
クレディセゾンのグローバル事業は、2014年に本格始動後、東南アジア・インドを中心にレンディング事業を展開。昨年2023年2月にブラジル、3月にはメキシコに事業会社を設立し、ラテンアメリカ地域への進出を果たしました。
今回は、ブラジル・サンパウロにあるCredit Saison Brazil Participações Ltda.(以下、Credit Saison Brazil)に赴任中の伊勢山さんに、ブラジルのこと、ブラジルでの暮らしとビジネスのこと、さらにはキャリア観の変化などについて伺いました。
※この記事の内容は、取材当時のものです。
ブラジルでの生活:温かい人々の国
―ブラジルってどんな国ですか?伊勢山さんの印象を教えてください。
初めてブラジルへ出張に行く際、ブラジルのことを調べると、犯罪の件数が多いという情報ばかりが出てくるので、とても緊張していたことを覚えています。
「路上では歩きスマホをしない」など、気をつけないといけない点はありますが、このような基本的なことを抑えておけばブラジルの方はみんなとてもフレンドリーで大変過ごしやすい国です。
例えば、子どもに対する気遣いがとても強く、電車やバスで赤ちゃんを抱っこしている人を見かけると、誰かが即座に席を譲ったり、泣いていても周りの人があやしたりしているシーンをよく見かけます。家族も暮らしやすい国だなと感じています。他の日系企業駐在員の方とお話しする機会も多いですが、皆さん口をそろえて同じ意見です。
―ブラジルはとても過ごしやすい国とのことですが、どんな特徴がありますか?
個人的な意見ですが、ブラジルが過ごしやすい国だと思う一番の理由は、我々のようなアジア人に対する差別を感じないことです。特に、日本人に対して非常にウェルカムな国であると感じます。
歴史を遡ると、1908年に日本から笠戸丸(かさとまる)という船に乗り、ブラジルに渡った781名の移民の方々のたゆまぬ努力が礎となっています。現在、ブラジルには約200万人の日系ブラジル人がいらっしゃるとのことで、実際に仕事をしていても、例えば佐藤などの日本名を持つ日系ブラジル人の方と多く出会いますし、Credit Saison Brazilにも日系人の社員が在籍しています。
どれだけ日系ブラジル人が社会に浸透しているかというと、私が街中で歩いていたり、飲食店に入ったりすると、必ず旅行者ではなく現地人(日系ブラジル人)と思われ、ポルトガル語で話しかけられるほどです。
金融サービスを提供する会社で働いているので、金融面での特徴をお話しますと、「PIX(ピックス)」という送金インフラが中央銀行主導で整備されています。これは、送金したい相手の携帯電話番号や個人IDを入力するだけで、即時且つ手数料なしで送金ができます。個人間はもちろんのこと、法人も「PIX」が使用できるため、決済手段として頭角を現しており、遂にはクレジットカード・デビットカードを合わせた決済件数を超えるほどブラジル社会に浸透しています。少し意外かもしれませんが、金融インフラやその改革の速さは日本より優れていると感じます。
―伊勢山さんの休日の過ごし方を教えてください。
住んでいるサンパウロ市は現代的な街並みですが、そんな中でも緑や自然が多く残っているスポットが存在します。特に、Ibirapuera Park(イビラプエラ公園)という市営公園は私のような外国人には勿論のこと、多くのブラジル人も週末に訪れる人気の場所となっています。
この公園の一番の特色は何といってもとにかく大きいところです。調べたところ、なんと東京ドーム33個分を超える広さのようです。ブラジルは日本の国土の22倍もあるとはいえ、サンパウロの大都会の真ん中にこれだけ大きい公園があることに驚き、スケールの大きさをしみじみと感じます。
ちなみに、迂闊に公園の真ん中に行ってしまうと出るに出られず、暑い日は熱中症になってしまうんじゃないかと心配になることがあります(笑)
ファイナンシャル・インクルージョンの実現。Credit Saison Brazilの役割
―Credit Saison Brazilのビジネスについて教えてください。
FIDC(Fundo de Investimento em Direitos Creditórios)と呼ばれる債権ファンドへの投資を通じて、アンダーサーブド層(※)を中心に融資を行う現地のフィンテックに資金を提供しています。
※アンダーサーブド層:既存の金融サービスに十分にアクセスできない、または不便を感じている企業や個人
というのも、上記で説明した「PIX」のようにブラジルは金融インフラが非常に整備されている国ではありますが、まだまだすべての人や企業が健全な金融サービスを享受できているとは言えない面があります。
一例ですが、クレジットカードのリボ払いの年利は400%を超えているなど、分割払いをせざるを得ない中間層以下の人々は、高金利に苦しむ環境が実態として存在します。
このような課題を解決するために、クレディセゾンのグローバル事業が目指す、「誰もが必要な金融サービスを十分・適切に受けられるファイナンシャル・インクルージョンの実現」という共通ゴールのもと、ブラジルでも事業を展開しています。
Credit Saison Brazilの事業により、現地でより多くの企業や個人が適切な金融サービスにアクセスできるようになり、ひいては彼らの事業成長や生活向上に貢献できると自負しています。
―伊勢山さんの現在の担当業務とメンバーについて教えてください。
私は人事とガバナンスを兼務しています。特に、人事の業務では採用に注力しています。
2023年に会社を設立して約1年半経ちますが、現在の社員数は11名です。英語力のチェックや実務アセスメントによる専門スキルを厳格に見極めた採用を行い、少数精鋭で事業を運営しています。
7月に私の上司にあたる人事部のLuiza(ルイザ)さんを採用した際は、300通以上の経歴書から厳選し、100名以上の候補者と面接して、ようやく若いながらも人事のプロフェッショナルである彼女を雇用することができました。
いずれのメンバーも、グローバル事業の志である「ファイナンシャル・インクルージョン」に強く共感し入社した情熱溢れる人たちです。
ゼロからのスタート!Credit Saison Brazilでの新規事業経験
―ブラジルでビジネスの立ち上げを経験し、特にどんなところに本社で働くこととの違いを感じていますか?
これまでの自身の経歴を振り返ると、本社でも比較的新規立ち上げ型の事業に携わっていたことが多かったと思います。しかしながら、Credit Saison Brazilの新規設立と事業運営は、文字通り何も無いところからのスタートでした。
今までクレディセゾンという大企業でできあがったオペレーションの中で仕事をしていた自分にとっては、創立したてのスタートアップのような、本社とは歴史もステージも全く異なる会社に転職したようでした。急なトラブルを含め、毎日が新しいことと勉強の連続です。会社設立から1年半経った今でも、以前に劣らず日々さまざまことが起きており非常に充実した日々を過ごしています。
グローバルな視点で考えるこれからのキャリア
―最後に、これまでの赴任生活を振り返るとともに、今後の展望について教えてください!
海外赴任は今回が初めてですが、あっという間に1年が経とうとしています。仕事で1分1秒も惜しいと感じる忙しい日々を過ごしていた一方で、プライベート面でも異国の地ということで予期せぬトラブルがあったりと、なかなか落ち着きませんでした。休日しっかり休んで週明けから仕事を頑張る、といった基本のメリハリのある生活リズムを作ることさえも苦戦しました。
当然のことですが、ビジネスパーソンとして、仕事もプライベートもコンスタントに結果を出すのがプロフェッショナルなのだなと改めて思い、またそのギャップを痛感することが多々ありました。1年目の反省や教訓を活かし、2年目は仕事もプライベートも、周囲や自分が期待する以上の成果を残す年にしたいと思っています。
また海外で働くことで、キャリア観についても変化が出てきたように思います。日本の多くの企業では専門性を掘り下げるキャリアは一部の部門でしか求められず、多くの方はジェネラリスト(総合職)として幅広い知識を得ながらキャリアアップをしていると思いますが、ブラジルや諸外国では真逆で、一人ひとりが専門性に磨きをかけていくことが一般的です。温故知新ではないですが、幅広い知識を引き続き習得していく一方で、一つの専門性を掘り下げていくことが海外の現地社員の中でも活躍できる鍵だなと感じています。
周りに負けない専門性を身につけ、グローバルに活躍できる人材になれるよう努力を続けていきます。
―伊勢山さん、ありがとうございました!