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【SDGsイベントレポート】シンガポール発インパクト投資について社内セッションを開催

こんにちは!クレディセゾン グローバル戦略企画部の林(イム)です。

クレディセゾンのグローバル事業では、銀行など従来の金融機関から融資を受けることができないアンダーサーブド層と呼ばれる個人や中小零細企業に対して融資を行い、ファイナンシャル・インクルージョン(※1)の実現をテーマに「インパクト投資(※2)」の取り組みを推進しています。
 
※1 ファイナンシャル・インクルージョン(金融包摂):誰もが必要な金融サービスへアクセスでき、金融サービスの恩恵を受けられるようにすること。

※2 当社のインパクト事業の大半は「融資」によるものですが、本記事では一般的に使用されている「インパクト投資」として記載します。

インパクト投資とは、一般的な投資で求められる財務的リターンだけでなく、ポジティブで測定可能な社会的・環境的インパクトを同時に生み出すことを意図する投資行動のことを指します。
 今回、当社が推進しているインパクト投資の具体的な取り組みと、そこから生み出される社会的なポジティブ・インパクトについて、社員に知ってもらうためのセッションを開催しました。
 
今回のプレゼンターは、2023年よりシンガポールでインパクト投資の実務に携わっている水野理恵さんです。2011年にクレディセゾンに新卒入社、国内でクレジットカード営業などの経験を積み、2017年よりグローバル事業へ異動。その後インド駐在を経てSaison Internationalのインパクトチームに所属しています。国内でのキャリアを持つことから、インパクト投資というあまり馴染みのない分野について、国内で働く社員の目線や考え方に寄り添いながら説明してくれました。
 
私は2023年10月に中途採用で入社し、今回はグローバル戦略企画部員として主催者側ではありましたが、インパクト投資について知るのは恥ずかしながら初めてでした。

そんな「インパクト投資素人」ではありますが、先輩社員の説明が直接聞ける貴重な学びの機会を通じて得たこと、感じたことをレポートさせていただきます。
 
※ 記事の内容はレポート当時のものです。


林 裕羅(イム ユラ)
株式会社クレディセゾン グローバル事業部 グローバル戦略企画部



当社のインパクトゴールとSDGsについて

当社のグローバル事業は2つのインパクトゴールを掲げ、レンディング事業を通じて新興国を中心に多くの人々がアクセスできる金融ソリューションを提供することで、ファイナンシャル・インクルージョンの実現を目指しています。


私たちが選択した4つのゴール


このインパクトゴールは、皆さんも最近よく目にする持続可能な開発目標(SDGs)の17のゴールに密接に関わっています。
SDGsは経済的・社会的に広範なテーマに及んでいますが、企業や投資家がこれらの課題解決に取り組む場合、17すべてをゴールに設定する必要はありません。ビジネスを通じて達成が見込める内容から着手し、事業戦略や目標に組み込むことで、ビジネスの成長や拡大とともに達成を目指すことが重要と考えられています。

 当社のグローバル事業では、17のゴールのうち関連の深い1・8・9・10を選択し、インパクトゴールと結び付けることでSGDsの課題解決に取り組んでいます。

ちなみに、国際連合では毎年SDGsに対する各国の総合的なパフォーマンスを評価し国別ランキングを発表しています。2023年度において日本は21位でした。個人的には思ったより順位が低いことに驚いたとともに、日本のSDGsの課題解決に対するさらなる認識の向上とコミットメントが必要だと感じました。


オンライン参加も併せてたくさんの方にご参加いただきました


実際に現地を訪れることの大切さ

当社のインパクト投資は、各海外子会社において常にインパクトゴールの達成に沿った事業運営ができるよう、共通のフレームワークを設計し、各国の事業プロセスに組み込んでいます。セッションでは共通のフレームワークの一部である投融資先候補の選定・評価について、具体的な取り組みの説明がありました。
 
融資先を検討するにあたっては、まずは書面上で確認します。当社のインパクトゴールに合致しているか、またネガティブな影響を創出する可能性がないかチェックします。具体的には、武器の生産や児童労働、人身売買といったようなリスクをリスト化し、融資先から除外します。これをESG(※3)スクリーニングと言い、国際基準に準拠した形で行っています。
 
「いかにポジティブなインパクトを生み出すか」と同じくらい、「いかにネガティブな影響を生み出さないか」も大事なポイントです。

※3 ESG:Environment(環境)・Social(社会)・Governance(ガバナンス・管理体制)
 
次に、ESGスクリーニングを通過した企業を対象に、実地調査を行います。これは資料上の数字や記述だけで判断するのではなく、実際に融資先候補を訪問し、現場でしか発見できない実態を確認するためです。
 
セッションでは一例として、水野さんが実際に訪問した融資先候補の工場の動画を流し、参加者が気づいたリスクについて発表するケーススタディを行いました。たった1分程度の短い動画でしたが、資料からは読み取れない危険な作業環境がいくつも確認できました。
 

実地調査について説明する水野さん


例えば、衣服や靴等の安全保護具なしで肌を露出しながら働いている作業員や、明らかに未成年であろう児童が働いている様子が確認でき、日本では考えられない状況に驚きました。水野さんによると、作業現場は化学薬品の強い匂いも充満しており、マスクなしでは確実に健康被害が起きるような環境だったとのことです。動画でも分からない、現場に赴いて初めて分かる問題点も多くあったそうです。
こうした企業を単純に融資先候補から除外するのではなく、リスクに対処・改善していくためのアクションプランを作成し、期限を設けてフォローアップを行っています。
 
このケーススタディを通して、融資先候補に直接足を運び五感を使って現場の状況やリスクを確認することの大切さと、リスクを削減するための地道な取り組みにより、一つ一つの企業の職場環境の改善に繋がっていることを実感しました。


社会から求められる当社の役割

私は前職で化学メーカーに勤めていたので、SDGsといえば環境に優しい原料の選定または工場廃棄物のリサイクル方法など、環境面に着眼した活動というイメージが強く、当社のような金融企業には関係が薄いものと考えていました。
 
しかし、今回のセッションを通じて、SDGsは環境保全だけでなく社会的な取り組みも含まれていると知りました。特に新興国は社会的基盤が不足しているため、整備には膨大な資金が必要です。この資金を調達するためには公的資金だけでなく、民間企業の協力も必要不可欠です。そこに社会から期待される当社の役割があり、それが着実に果たせていることを今回のセッションを通じて感じました。
 

水野社長も参加し、闊達な質疑応答が行われました


もしかしたら、皆さんの中には「日本にも環境的・社会的な課題があるのに、なぜ敢えて海外で?」と考える方もいらっしゃるかもしれません。しかしながら、課題の大きさ=市場の大きさとも言われるように、インパクト投資は2017年から2022年の間に世界的な市場規模が約10倍になっています(※4)。
このように、インパクト投資はビジネスチャンスとしてもその重要性が認識され始めています。当社はビジネスとしてインパクト投資を行うことで持続可能なものとしつつ、これらの取り組みを発信することで、インパクト投資に関する日本での認知度向上にも貢献できると考えています。
 
※4 GIIN(Global Impact Investing Network、インパクト投資の拡大と質の確保を目的とする国際的なインパクト投資家ネットワーク)による公表データ


パリからオンラインで参加したインパクトチームヘッドのMarie Anna(マリアナ)さんと共に


最後に

今回のセッションを通して、当社のインパクト投資とSDGsとの密接な関係性や、必ず現地訪問するという地道で堅実な取り組み、そしてインパクト投資のニーズとビジネスチャンスについて網羅的に学ぶことでき、改めてインパクト事業は今後の持続可能な社会の実現のために必要であることを改めて実感しました。
 
また、同じ会社の社員として語られた実体験に基づく説明は、本やインターネットからでは得難い貴重な内容で、他の参加者からもたくさんのポジティブな感想が寄せられました。
 
今後もインパクト投資や自社の社会的な貢献について、私も含め多くの社員が意識を向け、継続的に理解を深めることで、自身の業務や行動に活かしていきたいと思っています。


社内での認知度向上に加え、社外に向けての周知活動も少しずつ強化しています。昨年にはグループ初のインパクトレポートをSaison Internationalのウェブサイト上に公開しました。レポートでは当社グローバル事業が生み出したポジティブ・インパクトを測定・掲載するとともに、融資を受けた企業や人々の声をまとめたビデオを公開しています。

■当社インパクトレポートはこちら

 
■当社サステナビリティ(インパクト投資)に関する取り組み一例はこちら(当社情報は、インパクト志向金融宣言 プログレスレポート2023の28ページに掲載)