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内製開発戦記 番外編:東京都宮坂副知事 クレディセゾンのテクノロジーセンターを訪問 ~内製開発を通じたデジタル推進の未来をテーマに交流~

2024年11月6日、東京都の宮坂副知事と東京都のDXを推進する一般財団法人GovTech東京(※1)の職員の皆様が、クレディセゾンに来社され、テクノロジーセンターの視察と内製開発に関する意見交換を行いました。

クレディセゾン取締役CDO、CTOである小野は2021年から東京デジタルサービス会議(※2)の委員を務めており、クレディセゾンが内製開発をDX戦略の一つの柱として推進していることから、東京都と初めての交流会が実現しました。

私たちクレディセゾンからは社長の水野をはじめ、取締役の小野、デジタルシステム部長の下岡、テクノロジーセンター長の藤野、EXグループ部長の長谷、そしてEXグループの松下がお迎えし、オフィスの案内と内製開発に関する意見交換を行いました。

「内製開発戦記」の特別編として、当日の様子をお届けします!

※この記事の内容は取材当時のものです。

クレディセゾンのテクノロジーセンターの内製開発の取り組みについては、内製開発戦記で連載していますので、ぜひご一読ください。


訪問の様子:オフィスツアーと内製開発の現場

宮坂副知事とGovTech東京職員の皆様を、高田馬場にあるクレディセゾンのFORECASTビルのワークスペースにご案内しました。こちらのオフィスでは、システム開発や情報セキュリティを担う情報システム部門と内製開発を担うテクノロジーセンターが日々業務を行っています。両部門に関する、実際の開発の進め方のご紹介や、職場の雰囲気や社員が仕事をしている様子を間近で見学いただきました。

新入社員がアプリ開発した本の貸し出しスペース「Saison Books」

都民のためのデジタルサービス改革:GovTech東京の取り組み

宮坂副知事からは、GovTech東京の取り組みと、2027年度までの中期経営計画に基づくデジタル施策についてお話をいただきました。また、クレディセゾンの小野からは、内製開発に関するこれまでの自社での取り組みについての紹介がありました。

~GovTech東京の存在意義や目指す未来について~

(宮坂副知事)

「GovTech東京は、住民の皆様の生活に直結するデジタル施策を推進しています。日常的に利用する行政サービスをより使いやすく、信頼できるものにするため、「ダメなサービスを撲滅し、放置しない」ことを徹底し、東京都が提供するすべてのデジタルサービスを「当たり前品質」に引き上げることを目指しています。

例えば、「コネクテッド・ワンストップ」「ワンスオンリー」を実現し、一か所の申請で関係するすべての手続きが完了する仕組みを進めていきます。人生で平均70日間を費やすとされる行政手続きの効率化を進めるためには、特に市区町村レベルでのデジタル化が重要です。都庁だけでなく、市区町村のデジタル化を推進することで、地域社会全体の利便性を高めています。

また、内製開発力の強化を目指し、アプリなどの小規模なサービスから開発を進めていきます。そのため、ICT人材(※3)の育成や共同調達・開発を通じて、持続可能なモデルを全国に提供し、地域社会をより便利で豊かにすることを目指しています。」

宮坂副知事(写真左)、GovTech東京の取り組みを議論中

内製開発の意義、成功の秘訣

今回の交流会では、内製開発が組織や働き方に与える影響について、東京都と私たちクレディセゾンで多くの共通項がありました。

~内製開発という手法の浸透プロセスについて~

(クレディセゾン小野)

「クレディセゾンでは、クイックウィンを積み重ねていくことが成功の鍵となりました。最初からスケールの大きい構想を掲げることはあえてせず、スモールスタートで内製開発を始め、関係する部門に内製化の効果を実感してもらいながら、段階的に範囲を広げていきました。開発者が業務を理解するために、実際の業務を体験しながら開発を行うこともありました。

内製開発チームの社員はほぼ全員がIT業界から転職してきたエンジニアで、エンタープライズはもちろん、スタートアップやWeb系企業からの転職者も多く、結果的に内製開発の普及が会社全体の組織風土改革を推進する側面もありました。小さな成功体験を積み重ねることで、組織内外の信頼を着実に得ながら内製開発を拡大することができました。

内製化の過程で、例えば「この業務は夜勤が前提となっているが、こういう仕組みを導入することで夜勤が不要になるのではないか?」といったように、従来当たり前とされていた仕事の仕方を見直す良いきっかけにもなりました。」

内製開発について語るクレディセゾン小野(写真右)

デジタル人材の育成

~二刀流の人材を輩出するGovTech東京を目指して~

(宮坂副知事)

「GovTech東京では、任期が基本的に5年であることから、他の自治体やパブリックセクターでも活躍していけるような、行政とデジタル二刀流の人材を次々と輩出していくこと、さらには他の組織からも「ぜひ採用したい」と言われるような人材輩出組織になることも目指しています。」

~文化的なギャップを乗り越えて柔軟で持続可能な組織に~

(クレディセゾン小野)

「クレディセゾンでは、内製開発部門と従来の情報システム部門が緊密に連携し、内製化を推進することで、迅速かつモダンな開発を実現しつつ、安定した運用との調和を図ることを目指しています。

この過程では、異なる価値観やアプローチによる対立が生じることもありますが、双方の強みを活かすことが重要な要素となっています。適材適所の人材配置や育成、そして文化的なギャップを乗り越える協力体制の確立が大切です。」

交流会を通して感じたこと


交流会に参加したデジタルシステム部長の下岡さんに、印象的だったことや気付きなど感想を伺いました。

写真左から2番目:下岡さん

―交流会の中で印象に残ったことはなんですか。

―当社の開発環境や運用ルールの周知方法や端末の取扱いといった実務的な内容まで関心を寄せていただきました。「デジタルの力で住民一人ひとりの生活を豊かに、そして幸せに」というGovTech東京のミッションのもと、内製開発を推進し、今後組織を大きくしていくにあたって真摯に取り組んでいらっしゃる姿勢が印象的でした。デジタル化によるよりよい行政の実現に、一市民として期待が膨らみました。

―今回の交流会を通じて、下岡さんご自身が改めて感じたクレディセゾンの強みや課題があれば教えてください。

―自社開発における当社の成果について話す中で、その柔軟性と俊敏性が改めて当社の強みであると感じました。私たちの知見が行政の役に立てることをとてもうれしく思います。

内製開発という手法を手に入れたことによって、大小問わずサービス提供者である事業部門と開発部門が共に迅速に進められるようになったことは、社内で実感している人も多いと思います。 

一方で、今回東京都の方針や計画の説明を受けて考えたことがあります。それは「外販思考」についてです。東京都が外販するわけではありませんが、「区市町村DX」として都が開発した仕組みを区市町村に拡大することを目指しています。その先には都を超え他の自治体へ展開していきたい思いもあります。より多くの住民の皆さんにDXを通じたサービスの利便性を提供したいという思いです。

ある課題を解決する際、その課題は社内だけでなく社外にも存在するはずです。同業他社はもちろん、異業種でも見え方は異なるかもしれませんが、根本的には同じ課題が横たわっていることが多いと思います。自分たちの課題を解決するソリューションを「外販思考」でさらに他へ展開していくことを意識すべきだと思いました。我々のソリューションにはキラリと光るものが多くあるはずです。

クラウドの雄であり、当社もシステム基盤として多くを利用しているAWS。これを担っているAmazon社が、自社でシステム構築する際の課題解決ソリューションを外販するようにしたのが、AWSクラウドサービスの始まりだそうです。自分の悩みは、みんなの悩み。みんなの悩みを解決して喜んでもらう、それがビジネスですね。

編集後記

今回の訪問で、東京都のDX推進に関わる方々と直接お会いできたことは、とても貴重な経験でした。クレディセゾンの社員として、普段はあまり触れることのないDX推進の現場を見学し、多くの新しい知見を得ることができました。
また、東京都の市民として、日本のデジタル化の進展に期待を抱いています。母国ウクライナでは、行政手続きはほとんどアプリで対応できるため、そのシステムと比較しがちな私は、日本ではまだ不便を感じることが多いと思っています。 特に、「コネクテッド・ワンストップ」「ワンスオンリー」のような一箇所で全ての手続きが完了する仕組みが実現すれば、生活がさらに便利になると感じています。
最後に、クレディセゾンの内製開発の強みを改めて実感し、行政に貢献できることをうれしく思います。これからも、このようなDX取り組みについて発信していきたいと思います。

広報室のカテリーナ

※1 GovTech東京:多様なパートナーと共に都と区市町村を含めた東京全体のDXを効果的に進める新たなプラットフォームとして、2023年に東京都庁の外側に設立された組織。
※2 東京デジタルサービス会議:東京都が全庁を挙げて都政の DX を進めるにあたり、都民誰しもが“使いやすく、満足度の高い”質の高いデジタルサービスの提供を目指し、デジタルサービスの開発・運用に係る 指針や遵守すべき技術基準等を取りまとめていくために設置され、東京都 CIO(情報統括責任者)及び 外部の有識者が構成員となっています。
※3 ICT人材:情報通信技術を駆使して業務を支える専門家。


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